相続人同士で遺産分割について話し合っても協議がまとまらないということは、「共同相続人間に協議が調わないとき」に該当しますので、家庭裁判所に遺産の分割を請求することができます(民法907条2項)。
家庭裁判所に遺産の分割を請求する方法としては、@裁判所の関与の下で、話し合いを基調として遺産の分割方法を決めていく「調停」という方法と、A裁判所の職権によって遺産の分割方法を決める「審判」という手続きがあります。
まずは、家庭裁判所に遺産分割の「調停」を申し立て、裁判所の関与の下で話し合いによって解決して行くのが良いでしょう。
調停は相続人であれば誰でも申し立てることができ、申立先は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所か、当事者が合意して定めた家庭裁判所です。
調停手続きは、非公開で、大体1ヶ月〜1ヵ月半に1回くらいのペースで進んで行きます。
後日調停が成立した場合には、裁判所で「調停調書」という調書が作成されますので、この調停調書にしたがって、不動産の登記名義の変更や、預金通帳の名義変更、現金の授受などを行うことになります。調停調書には、確定判決と同じ効力があり、これに基づいて強制執行を行うことも可能ですので、調停調書に記載された内容を反故にすることは出来ません。
なお、遺産分割事件には調停前置主義(調停の手続きを経ても解決できなかった場合に初めて裁判を起こせるということ)は適用されませんので、当初から「調停」、「審判」のいずれの手続きでも申し立てることが可能となっていますが、遺産分割の問題は親族同士の問題ですから、まずは調停を申し立てて、裁判所の関与の下でできるだけ話し合いによる解決を図ったほうが良いと思います。
実際の実務でも、遺産分割事件については、まずは調停を申し立てるケースがほとんどですし、仮に、最初から「審判」を申し立てたとしても、余程の事情(既に、それぞれの相続人が弁護士を通じて協議・交渉を行ったが、まったく解決の見通しが立たないようなケース)がない限り、裁判所の職権によって、まずは調停に回されることが多いのが現状です。
調停手続きが不調に終わってしまった場合は、手続きはそのまま審判手続きに移行し、裁判所が職権によって遺産分割を行いうこととなります。 |