借主(賃借人)のかたがずっと行方不明で賃料も滞納している場合、このままずっと家賃収入は途絶えたまま、別の人にも貸せないという状況に陥りますので、早めの対処が必要です。
裁判手続きを進め、最終的には強制執行によって建物の明け渡しを実現せざるを得ないでしょう。
手続き上の問題点としては、@どのようにして行方不明の借主に対して賃貸借契約の解除を行うかということと、A残置物の処理を含め、どのようにして立ち退き(明け渡し)を実現するかのかということが問題となります。
まず、@の点ですが、行方不明になった人に対して内容証明郵便を出して賃貸借契約の解除の意思表示をしても、内容証明郵便自体が届きませんから、賃貸借契約を解除することはできません。そこで、建物の明け渡しを求める裁判を提起し、訴状を「公示送達」すれば良いでしょう。訴状の中で賃貸借契約を解除する旨の意思表示を行い、その訴状を公示送達の手続きに付せば、掲示の日から2週間経過した日に、賃貸借契約解除の意思表示は、行方不明者の相手方に到達したことになるのです。
次にAの点ですが、建物の明け渡しを求める訴状に、建物の明け渡しだけではなく、滞納分の家賃の請求も行っておくことが重要です。なぜなら、滞納家賃の支払いを命ずる判決もとっておけば、それを債務名義として、室内に置き去りにされている動産(残地物)を差し押さえ、競売に付することが可能になり、この強制執行手続きを通して、建物からの立ち退き(明け渡し)を実現できるからです。
以上のような手続きを踏むことは面倒だと思われるかもしれません。しかし、注意していただきたいのは、借主のかたが長期間行方不明になったからといって、勝手に室内の残置物を運び出したり、鍵を変えたりしてしまうと、逆に損害賠償を請求されるおそれがあるのです。勝手に室内の残置物を運び出したり、鍵を変えたりしてしまうとういうような行為(自力救済行為)に対しては、裁判所の態度も厳しいのが現実です。 |