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私は不動産売買の媒介・仲介業を行っていますが、媒介・仲介を行うに際して、どのような点に注意しておいた方が良いですか?


 近年、専門家に対する責任の追及が厳しくなっているのが現状です。特に、土地・建物(不動産)といった高価なものを日常的に取り扱う宅建業者さんの場合は、思わぬトラブルに巻き込まれないよう、日頃から細心の注意を払っておくに越したことはないでしょう。

 宅建業者が、不動産売買・賃貸の仲介を依頼された場合、その依頼者との間では、民法656条の準委任契約契約が成立しますので、その依頼者に対して善良なる管理者としての注意義務を負うのは当然ですが、それだけでなく、宅建業法31条によって信義誠実義務が課されていますので、直接の依頼者だけでなく、取引の相手方や中間業者などその不動産取引に関わる第三者に対しても、信義誠実義務、つまりは、思わぬ損害を被らせないように注意する義務を負うということに注意してください。

 では、不動産売買の媒介・仲介を行う宅建業者が、具体的にどのような点に注意すれば良いのでしょうか。すべての注意点を網羅して挙げることはそもそも不可能ですが、以下では、裁判上、媒介・仲介を行った宅建業者に注意義務違反が認められた主な事例を挙げます。宅建業者が注意すべき事項は、これらに限られるものではありませんが、仲介・媒介を行う際のひとつの参考にはなろうかと思います。

(1)不動産の利用制限に関する事例
●土地の売買の媒介を行った宅建業者が、重要事項を説明する際に、「市街化調整区域」の具体的な意味や「建築許可を要す」の具体的な意味を、建物建築目的の土地を購入しようとしている買主に対して明確に説明しなかった事例。
●土地の売買の媒介を行った宅建業者が、都市計画の公表から決定までには十分な時間的間隔があって、都市計画の内容の調査は容易に可能であったにもかかわらず、売買の対象となった土地を含む地域の都市計画案の調査を怠り、近い将来、市街化調整区域となることを買主に対して説明しなかった事例。
●土地の売買の媒介を行った宅建業者が、売買の対象となった土地が宅地造成工事規制区域内にあって、建物を建てるためには莫大な費用が必要となるということを、転売目的での土地の買主に対して説明しなかった事例。
●土地の売買の媒介を行った宅建業者が、売買の対象となった土地に建築制限があることの説明を怠った事例。
●土地の売買の媒介を行った宅建業者が、売買の対象となった土地について、用途地域及び、建築制限に関して誤った広告を行い、重要事項説明書においても誤った説明を行ったまま、売買契約を成立させてしまった事例。
●土地建物の売買の媒介を行った宅建業者が、新聞広告及び重要事項説明書において、その土地に関する用途地域、建ぺい率、容積率について誤った記載・説明を行ったまま、売買契約を成立させてしまった事例。
●土地及び建物の売買の媒介を行った宅建業者が、@建物が一戸一棟式であるにもかかわらず、隣家との二戸一棟式の長屋としての建築確認しか受けていない点、A土地が接道義務を満たしていない点について、買主に対する十分な説明を怠った事例。
●宅地の購入の媒介の依頼を受けた宅建業者が、公道に接しない土地の売買を媒介した際に、買主に対して、他人所有地の通行の承諾に関する調査・説明を全く行わなかった事例。
●借地上の建物の売買の媒介を行った宅建業者が、@適法な借地権が存在するのか否か、A借地権の譲渡について地主の承諾が得られるのか否かについて十分な調査・説明を行わなかった事例。

(2)不動産の登記の調査に関する事例
●売買の媒介を行った宅建業者が、売買契約成立直前に、売買の対象となった不動産の登記簿謄本のチェックを怠ったため、契約直前に既に所有権が売主から第三者に移転していたことを見抜けなかった事例。
●店舗の賃貸借の媒介を行った宅建業者が、賃貸借契約締結の4ヶ月前に、既に賃貸目的不動産の所有権が他人に移っていたことを見落とし、結果として他人物賃貸を成立させてしまった事例。
●建物の賃貸借の媒介・仲介の依頼を受けた宅建業者が、不動産賃貸借契約締結の直前に賃貸目的不動産に差押えの登記がなされていたことを見落とし、賃借人が建物の明け渡しを余儀なくされた事例。
●宅建業者が土地の売買の媒介を行ったが、実は売買契約成立「後」、代金決済・土地の引渡しの履行前に、売主がその土地に抵当権を設定し登記を完了していたにもかかわらず、宅建業者が代金決済直前に登記簿謄本の閲覧を怠ったため、そのまま買主に代金の支払いを行わせてしまった事例。

3)不動産の瑕疵に関する事例
●宅地建物の売買の媒介を行った宅建業者が、事前に売主から地盤調査報告書を受け取り、その土地が軟弱な地盤であることを認識していたにもかかわらず、そのことを買主に説明しないまま、売買の媒介を行った事例。
●建築基準法によって耐火構造であることが要求されているにもかかわらず、耐火構造でない木造建築物が増築され、違法建築物となっていた区分所有建物(マンションの一室)の売買を媒介した宅建業者が、違法建築であることが判明していたにもかかわらず、その説明を怠った事例。
●建物の売買の媒介を行った宅建業者が、その建物内に雨漏りがあって、その雨漏りは修理しても直らないものであることを知っていたにもかかわらず、そのことを買主に対して説明しなかった事例。
●過去に建物の一部が火災によって焼損したために大きな修繕が行われた建物の売買を媒介した宅建業者が、建物の外観などから過去に焼損があった事実を認識でき、その上で売主に焼損の事実を確認できたはずであるにもかかわらず、これを怠った事例。

(4)不動産周辺の環境の変化に関する事例
●気管支炎を患っていた買主から、緑豊かで空気のきれいな土地の媒介の依頼を受けていた宅建業者が、売買契約成立時には既に申請済みの開発計画があったにもかかわらず、その土地の周辺の開発計画を十分に調査しないまま媒介を行い、その後隣接地で大規模な宅地造成開発が行われ、周辺環境が悪化した事例。
●宅地の売買の媒介を行った宅建業者が、事前に買主から「母親が家庭菜園をするので、日当たりが良い土地が欲しい」と聞いていたところ、媒介業者が周辺の環境調査を行えば、その土地の南側隣接地に近々高架道路が建設されることを容易に知ることができたにもかかわらず、媒介にあたって土地の周辺環境の調査を怠ったため、高架道路の建設計画があることを買主に告げないまま宅地売買の媒介を行った事例。
●日当たり、眺望良好という内容の中古マンションの広告を行った宅建業者従業員が、媒介に際して「マンションの住民の了解がないと、隣の土地には建物を建てることはできないので、このマンションの日当たりは守られる」との誤った説明を行ったまま売買契約が成立したが、後日(約3ヵ月後)隣接地に建物が建ち、マンションを購入した買主の日照が著しく阻害された事例。

(5)権限・代理権の有無に関する事例
●不動産売買の媒介を進めていた宅建業者が、「自称の」土地の所有者である売主から、「登録免許税の関係で不動産の登記名義は他人になっているにすぎない、抵当権も近日中に抹消できる」との説明を受け、これを安易に信用したまま売買契約を成立させてしまった事例。
●本人の実印や印鑑証明書等を持参した「自称の」土地売主の代理人から、土地の売却の媒介の依頼を受けたが、本人の実印や印鑑証明書等の存在のみによって安易に代理権の存在を信じ、本人に対する売却の意思確認を何ら行わないまま売買契約を成立させてしまった事例。


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